ACC診断と治療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

クラミジア、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム
(尿道・子宮頚管炎、咽頭・直腸感染)

Last updated: 2022-09-29

病原体

 代表的な性感染症である尿道炎・子宮頚管炎の最も一般的な原因菌は、クラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)で、その混合感染も多い。これらの疾患は、女性では無症候感染も多いが、男性では有症状であることが多く、特に、淋菌性尿道炎の症状は激しく、しばしば尿道から膿の流出をみる。クラミジアとマイコプラズマ・ジェニタリウムはいずれも細胞内寄生菌であり、淋菌と比較してマイルドな症状を呈することが多い。HIV感染症の高リスク群であるMSMでは、無症候の直腸感染が極めて多い。日本では直腸検体の保険収載がないため顧みられていないが、咽頭感染と直腸感染では症状が乏しいことから他者への感染源となっている1)。マイコプラズマ・ジェニタリウムの核酸検出法は、2022年6月まで保険収載されていなかったため、あまり知られていない性感染症であるが、薬剤耐性化率が上昇傾向であり世界的に懸念されている病原体である。

診断

 上述三菌種ともに診断のゴールドスタンダードはPCR検査である。クラミジア・淋菌の同時PCRが一般的に使用されており、共感染も多いことから有用である。尿道炎等の淋菌感染の診断に関しては、尿検体等のグラム染色(写真)が迅速性において診断的価値が高い。また、MSMで多い淋菌・クラミジアの直腸感染の診断は、スワブを肛門に3cmほど挿入してゆっくりと直腸壁に押し付けるようにして擦過して検体採取する。患者自身で採取しても、医師の採取と比較して感度には有意な差がないと報告されている。現時点では、直腸検体では保険適応がないため自費検査となる。MSMでは、症状の有無にかかわらず、最低年に一回クラミジア、淋菌等の検査が推奨されている。

治療

 クラミジア感染症に関しては、直腸感染ではazithromycinの治療成功率が8割を下回るため2)、doxycycline200mg/分2, 7日間が第一選択である。米国の2021年の性感染症ガイドラインではすべての感染部位で、azithromycinではなく、doxycycline200mg/分2, 7日間がクラミジア治療の第一選択となった3)。
 淋菌治療は薬剤耐性化が進んでいるため、セフェム系薬の静注治療を行う。感染部位に関わらずceftriaxone1g静注×1回が第一選択薬であり、クラミジア共感染が否定されていない場合は、混合感染を考慮してクラミジアの治療も行う。播種性感染の場合はceftriaxone1g1日1回静注を症状改善後、24-48時間経過するまで行う。セフェム系薬剤のアレルギーがある患者の場合には、スペクチノマイシン2.0g筋注単回が選択できるが、本治療法では咽頭感染には有効性が低い。Azithromycin2g+gentamicin(240mg筋注)なども選択肢として考慮される。
 マイコプラズマ・ジェニタリウムは薬剤耐性化が著しく進行しており、東京近郊のMSMでは、第一選択薬であったazithromycinの薬剤耐性は90%程度におよび無効である4)。このような薬剤耐性化の懸念も、2021年の米国性感染症ガイドラインのazithromycin使用を控えよう変更になった背景にある。日本のMSMにおけるマイコプラズマ・ジェニタリウムによる尿道炎治療はsitafloxacin200mg/分2, 7日間が現実的な選択肢と考えられるが、ニューキノロン系薬剤への薬剤耐性も高率に認められており、既に薬剤耐性における現実的な脅威となっている。
 また、全ての性感染症を通じて、パートナーへの告知とパートナーの同時治療が重要である。

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写真 淋菌のグラム染色

参考資料
1. Mizushima D, et al. High prevalence and incidence of rectal Chlamydia infection among men who have sex with men in Japan. PLoS One. 2019 Dec 10;14(12):e0220072.
2. Lau A, et al. Azithromycin or Doxycycline for Asymptomatic Rectal Chlamydia trachomatis. N Engl J Med 2021 Jun 24;384(25):2418-2427.
3. Centers for Diseases Control and Prevention. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021.
4. Ando N, et al. High prevalence of circulating dual-class resistant Mycoplasma genitalium in asymptomatic MSM in Tokyo, Japan. JAC Antimicrob Resist. 2021 Jun 30;3(2):dlab091.

 



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