ACC診断と治療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

帯状疱疹

Last updated: 2022-09-29

病原体

 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染によって水痘を発症する。初感染後もVZVは三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏感染し続け、宿主の免疫機能の低下に伴い再活性化されると、特定の神経支配領域の皮膚に水疱を生じ、帯状疱疹を発症する。
 HIV患者においては、pre-ART時代の報告では帯状疱疹は、non-HIVとの比較で15倍以上リスクが高いとされ、ART導入後であっても一般人口より3倍以上発症のリスクが高いと報告されている。さらに帯状疱疹はCD4数に関係なく発症することがあるが、特にCD4数<200 cells/mm3で発症のリスクが増加する。
 ARTとの関連においては、ART導入後6ヶ月は免疫再構築症候群として帯状疱疹が増加するいう報告も複数ある。

臨床像

 皮疹が出現する数日前から発症部位の神経支配領域に疼痛が出現する。その後、身体片側の三叉神経、脊髄神経支配領域に一致して発赤し、丘疹となり水疱が形成される。水疱は膿疱、びらん、痂皮と経過をたどり瘢痕化する。皮疹出現後7日程度は水疱が新しく出現してくるため1分節から連続するいくつかの分節の神経支配領域に新旧の皮疹が混在する。20-30%のHIV患者で1回以上の帯状疱疹の既往がある。
 三叉神経第1枝、第2枝を侵す帯状疱疹では進行性網膜外壊死、急性網膜壊死といった重篤な眼合併症を発症することがあり、急速に失明するリスクがある。水疱病変が前額部や鼻背上部などに病変が見られる場合には、上記のリスクを考慮し、眼科医への紹介が勧められる。進行性網膜外壊死はCD4が100/μL以下で発症するとされ、治療には眼科医との連携が必須である。また髄膜炎、横断性脊髄炎、脳炎を発症した報告もある。10-15%のHIV感染例が帯状疱疹治療後に帯状疱疹後神経痛を発症するとされるため早期の治療や疼痛コントロールが重要である。

診断

 特徴的な皮膚病変から、診断は視診により比較的容易である。他のヘルペス性疾患との鑑別を要する場合には、水疱内容の抗原検査、PCRやウイルス分離による鑑別を考慮する。髄膜炎、脊髄炎、脳炎(皮疹が少なかったり、全くない場合もある)を診断するためには、症状からVZVを積極的に疑って髄液のPCR検査を提出する必要がある。

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治療

 抗VZV薬は腎排泄性であり、CCr ≦50-60mL/minでは用量調整(減量)が必要である。詳細は添付文書等を参照すること。
 皮疹が限局しているような単純性帯状疱疹に対しては下記が標準的な治療法である。

  Valacyclovir  1g 3回 5-7日間
  Famciclovir 500mg 3回 5-7日間
 治療期間については新規皮膚病変の消失など治療経過をみて調節が必要な場合もある。

 三叉神経、2分節以上の拡がりを呈する播種性帯状疱疹や、内臓病変も疑われる場合などの複雑性帯状疱疹または重症例では、点滴治療が推奨される。入院下の播種性帯状疱疹では空気感染対策が必要である。
 米国CDCの感染対策に関するガイドラインでは「HIV感染者の帯状疱疹は軽症例も含め、全例が空気感染対策の適応としているが、当科では播種性病変でなければCD4<200/μLの場合に空気感染対策を行っている。

  Acyclovir 10mg/kg 8時間毎 7-10日間
 内臓病変の関与がなく、解熱している場合は経口治療への変更も可能である。

 VZVの予防にはワクチンが有用である。一般人口と同じ、50歳以上で接種が推奨されている。CD4数による推奨の変化はないが、専門家によりウイルス抑制後の投与やCD4が改善したところでの投与が望ましいとする場合もある。
 シングリックス 0, 2 months (2回目は6ヶ月以内の接種が推奨)

 



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