ACC診断と治療ハンドブック

参考図表

HIV検査を考慮すべき状況

Last updated: 2022-09-29

 早期にHIV感染症を診断し、早期に抗HIV療法を開始することで、エイズ発症を防ぐことができ、感染者本人の予後を改善する。また、抗HIV療法により性交渉による他者への二次感染も防ぐことができる。日本では保健所の提供する無料匿名のHIV検査が広く活用されているが、早期診断・早期治療開始は感染者の生命予後に直接関連している事を理解し、一般診療現場においても安心して検査が受けられる環境を整え、積極的にHIV感染症を診断する努力を続ける必要があると思われる。
 様々な状況でHIV検査が勧められるが、代表例を以下に示す。

1)性行為感染症の既往

 性感染症の既往がある場合、HIV検査が勧められる。2012年3月5日付の厚生労働省通知(平成24年3月5日保医発0305第1号)において、HIVスクリーニング検査は、従来認められていた「HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合」に加え、「(性感染症の)既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合」にも保険点数が算定可能であることが明記された。
 合併頻度の高い性感染症として、梅毒、尿道炎(淋菌・クラミジア)、陰部ヘルペス、尖圭コンジローマ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、赤痢アメーバ感染症があるが、細菌性赤痢・ジアルジア症などの腸管感染症や、肛門周囲膿瘍などもHIV感染症との合併がよくみられる。


2)日和見感染症の合併

 結核、非結核性抗酸菌感染症、口腔・食道カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、悪性リンパ腫等の発症が、HIV感染の診断の契機となることが多いが、帯状疱疹、繰り返すヘルペス感染症、難治性の皮膚真菌症、難治性湿疹、好酸球性毛嚢炎なども、未治療のHIV感染者によくみられる。

3)急性HIV感染症の症状が疑われる者

 原因不明の発熱やリンパ節腫脹、原因不明の脳炎・髄膜炎、伝染性単核症、原因不明の血球減少など、急性HIV感染症を疑う症状を呈している場合は、積極的にHIV感染を疑う。超急性期においては、第四世代HIVスクリーニング検査(抗原+抗体)やイムノクロマト法では、ウインドウピリオドによる偽陰性がありうるため、間隔をあけて1-2週後に再検査を行うか、HIV-1 RNA-PCR法により診断する必要がある(注:2022年9月現在、急性HIV感染症の診断を目的としたHIV-1 RNA-PCR検査は、保険適応がない)。

4)妊婦

 HIV母子感染対策を適切に行うため、すべての妊娠中の女性にHIV検査が推奨されている。日本では妊婦におけるHIV感染の有病率が低い事から、HIVスクリーニング検査の偽陽性が極めて高頻度に見られるため、スクリーニング陽性例では続いてイムノクロマト法およびPCR法を行い、確定診断は慎重に行う必要がある。

5)Key population

 特定の地域において、最も感染リスクが高く対策が必要とされるグループをkey populationと呼ぶ。日本のHIV感染症は、ゲイ・バイセクシャルの男性を含む、男性との性的接触のある男性(men who have sex with men, MSM)を中心に拡大しており、key populationに位置付けられている。世界的には、性産業に従事している者、麻薬・覚醒剤など薬物濫用の既往のある者もkey populationとされている。

6)HIV有病率の高い国の出身者または滞在者

 HIV有病率が高い国や地域の出身者においては、HIV感染を疑うことが重要である。感染対策が不十分な環境下で医療を受けたり、コンドームなしの性行為を行ったり、感染リスクの高い状況を経験している時は特に注意する。人道的支援を求めて日本に入国している者についても、出身地域のHIV有病率を鑑みた配慮が必要である。

7)HIV感染者との性的接触があった場合

 まだ抗HIV療法を受けておらず、血中HIV-RNA量が十分に抑制されていない場合には、性行為の相手はHIVに感染するリスクがある。

8)体液曝露事故を起こした医療従事者

 針刺し事故など、体液曝露事故を経験した医療従事者においては、曝露源となる患者のHIV感染が否定されない限り、HIV感染リスクが存在するものと考えて対処する。
労災適応などのため、曝露前にHIV陰性であった事を証明しておく必要がある。針刺し後、緊急性はないが、数日以内にHIV検査をしておく必要がある。

 



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