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HIV検査を考慮すべき臨床状況

更新日:2018年8月13日

HIV感染症に特異的な症状はなく、HIV検査を行なわなければ診断することはできません。2012年現在、国内で診断され届け出が行なわれたHIV感染者の数は累計2万人を超えましたが、この他に多くの「自らが感染していることを知らずに」生活しているHIV感染者がいます。残念ながら日本では、エイズを発症して初めてHIV感染が判明する「いきなりエイズ」例が後を絶ちません。病院を受診した無症候期のHIV感染者を、細胞性免疫機構の破壊が進行する前に発見することは、医療従事者の責務です。

HIV感染症の診断の契機となりうる代表的な症状・所見や臨床状況には、以下のようなものがあります。このような症状で受診した患者さんでは、臨床経過や既往歴・生活歴とあわせ、HIVスクリーニング検査を行う必要性についてご検討ください。特にB型肝炎の治療方針はHIV感染の有無により大きく影響されますので、抗HBV療法を開始する前に検査を行うことが重要です。

なお、検査を行う際には患者さんに説明し、同意を得る必要があることにご留意ください。

一般内科・救急領域

  • インフルエンザ様症状(特に数日を超えて続くもの)
  • 伝染性単核症
  • 原因不明の長期にわたる発熱
  • 原因不明のリンパ節腫大
  • 原因不明の脳炎・髄膜炎
  • 血球減少(3系統いずれの減少も来しうる)

消化器領域

  • ウイルス性肝炎(A型・B型・C型)
  • 赤痢アメーバ症(腸炎・肝膿瘍)
  • 抗菌薬に反応しない虫垂炎(アメーバ症の可能性あり)
  • 腸管感染症(細菌性赤痢・ジアルジア症など)
  • 肛門周囲膿瘍
  • 肛門部尖圭コンジローマ
  • 口腔・食道カンジダ症
  • Kaposi肉腫
  • 悪性リンパ腫
  • 消化管サイトメガロウイルス感染症

皮膚科領域

  • 帯状疱疹
  • 繰り返すヘルペス感染症
  • 難治性の皮膚真菌症
  • 難治性湿疹
  • 好酸球性毛嚢炎
  • カポジ肉腫
  • 梅毒
  • 尖圭コンジローマ

泌尿器科・婦人科領域

  • 尿道炎(淋菌・クラミジア)
  • 陰部ヘルペス
  • 尖圭コンジローマ
  • その他の性感染症

生活歴・既往歴・社会背景

  • 性感染症の既往
  • ウイルス性肝炎の既往
  • 日和見疾患の既往(若年者の帯状疱疹など)
  • 男性との性的接触のある男性
  • 性産業の従事者
  • 既知のHIV感染者との性的接触
  • 麻薬・覚醒剤など薬物濫用の既往
  • HIV有病率の高い国の出身者
  • 妊娠女性(早期発見すれば児への感染を予防することができます)

2012年3月5日付の厚生労働省通知(平成24年3月5日保医発0305第1号)において、性感染症合併例におけるHIVスクリーニング検査(HIV-1抗体検査・HIV-1/2抗体検査・HIV-1/2抗原・抗体検査)は、従来認められていた「HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合」に加え、「(性感染症の)既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合」にも算定可能と明記されました。

文責:塚田

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