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HIV検査を考慮すべき臨床状況
HIV感染症に特異的な症状はなく、HIV検査を行なわなければ診断することはできません。2012年現在、国内で診断され届け出が行なわれたHIV感染者の数は累計2万人を超えましたが、この他に多くの「自らが感染していることを知らずに」生活しているHIV感染者がいます。残念ながら日本では、エイズを発症して初めてHIV感染が判明する「いきなりエイズ」例が後を絶ちません。病院を受診した無症候期のHIV感染者を、細胞性免疫機構の破壊が進行する前に発見することは、医療従事者の責務です。
HIV感染症の診断の契機となりうる代表的な症状・所見や臨床状況には、以下のようなものがあります。このような症状で受診した患者さんでは、臨床経過や既往歴・生活歴とあわせ、HIVスクリーニング検査を行う必要性についてご検討ください。特にB型肝炎の治療方針はHIV感染の有無により大きく影響されますので、抗HBV療法を開始する前に検査を行うことが重要です。
なお、検査を行う際には患者さんに説明し、同意を得る必要があることにご留意ください。
一般内科・救急領域
- インフルエンザ様症状(特に数日を超えて続くもの)
- 伝染性単核症
- 原因不明の長期にわたる発熱
- 原因不明のリンパ節腫大
- 原因不明の脳炎・髄膜炎
- 血球減少(3系統いずれの減少も来しうる)
消化器領域
- ウイルス性肝炎(A型・B型・C型)*
- 赤痢アメーバ症(腸炎・肝膿瘍)*
- 抗菌薬に反応しない虫垂炎(アメーバ症の可能性あり)
- 腸管感染症(細菌性赤痢・ジアルジア症など)*
- 肛門周囲膿瘍
- 肛門部尖圭コンジローマ*
- 口腔・食道カンジダ症
- Kaposi肉腫
- 悪性リンパ腫
- 消化管サイトメガロウイルス感染症
皮膚科領域
- 帯状疱疹
- 繰り返すヘルペス感染症
- 難治性の皮膚真菌症
- 難治性湿疹
- 好酸球性毛嚢炎
- カポジ肉腫
- 梅毒*
- 尖圭コンジローマ*
泌尿器科・婦人科領域
- 尿道炎(淋菌・クラミジア)*
- 陰部ヘルペス*
- 尖圭コンジローマ*
- その他の性感染症*
生活歴・既往歴・社会背景
- 性感染症の既往*
- ウイルス性肝炎の既往*
- 日和見疾患の既往(若年者の帯状疱疹など)
- 男性との性的接触のある男性
- 性産業の従事者
- 既知のHIV感染者との性的接触
- 麻薬・覚醒剤など薬物濫用の既往
- HIV有病率の高い国の出身者
- 妊娠女性(早期発見すれば児への感染を予防することができます)
* 2012年3月5日付の厚生労働省通知(平成24年3月5日保医発0305第1号)において、性感染症合併例におけるHIVスクリーニング検査(HIV-1抗体検査・HIV-1/2抗体検査・HIV-1/2抗原・抗体検査)は、従来認められていた「HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合」に加え、「(性感染症の)既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合」にも算定可能と明記されました。
文責:塚田
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