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血友病HIV感染者におけるHAND研究

1. 研究の背景

HIVが中枢神経系に及ぼす障害として、かつてはHIV脳症という進行性の予後不良疾患が知られていたが、抗HIV療法が進歩した現在では古典的なHIV脳症は減少している。一方で、治療によってHIVが良好に抑制されている患者でも、HIV関連神経認知障害(HIV-associated neurocognitive disorders; HAND)が起こることが報告された。欧米での報告では、HIV感染者の約半数に認められると言われるが、重症度に関する疫学データはまだ確立しておらず、違法薬物や精神疾患などの影響も見解が分かれている。

本邦においては、評価ツールとなる神経心理検査が施設ごとに統一されていないために、有病率に関する大規模な疫学データの構築が遅れていた。当センターが中心となって血友病以外のHIV感染者を対象に行ったJ-HAND研究では、全国17施設で統一された神経心理検査バッテリ(CoCoバッテリ)を用いた評価により、HAND有病率を正確に把握し、増悪因子や交絡因子の影響の評価を行った。結果として得られた罹患率は26%(内訳:ANI 14%、MND 11%、HAD 1%)と米国の約半分であったが、英国や韓国からの報告と類似の結果であり、検討した対象者やARTの違いを反映していると考えられた。また、50歳以上になると年齢に依存してHANDの罹患率が上昇した。また、治療によりHAND全体の頻度は変わらないが、MND以上の頻度は低下した。この結果は、ARTがHANDに効果があることを示している可能性がある。
 
   

2. 研究の概要

本研究では、J-HAND研究と同じCoCoバッテリを用いて、血友病HIV感染者におけるHAND有病率の把握を行う(J-HAND研究では除外された精神疾患などの交絡因子を有する症例も、検査が可能である限り対象とする)。また、神経心理検査と同日に精神科専門医による評価も行う。

神経心理検査および精神科診察に約3時間を要するため、事前にスケジュールを調整したうえで木曜日に実施している。