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柳川泰昭先生が第9回(2020年度)箱根山奨励賞を受賞しました

お知らせ
更新日:2021年4月13日

柳川泰昭先生が第9回(2020年度)箱根山奨励賞を受賞しました

 箱根山奨励賞は、対象となる年に優れた論文を発表し、研究業績がセンターのミッションの推進や医療の進歩、医療政策の推進に貢献した40歳未満の若手職員を表彰することを目的とし、国立国際医療研究センターにおいて2012年に創設されたものです。
 これまでの受賞者一覧は国立国際医療研究センターウェブサイトに掲載されています。

 2020年度・第9回の箱根山奨励賞を、柳川泰昭先生が受賞しました。


研究論文タイトル
Clinical features and gut microbiome of asymptomatic Entamoeba histolytica infection.
Clinical Infectious Diseases 2020 Jun 21;ciaa820.

概要
 国内で性感染症として増加している赤痢アメーバ症のうち、感染リザーバーとなっている「無症候性持続感染」の病態に着目し、臨床的特徴をまとめ、また赤痢アメーバ症と腸内細菌叢の関連について、前向き研究解析を行ったものです。
 当院でPCR法により確定診断を行った赤痢アメーバ症64例のうち、13例の無症候性持続感染例について、下部消化管内視鏡検査で評価を行なったところ、全例で大腸粘膜病変を認めました。特に、粘膜病変の分布状況に着目すると、無症候性持続感染例では、回盲部から上行結腸にかけて粘膜病変が局在していましたが、一方、消化器症状を呈する症候性感染例では、大腸全体にわたって粘膜病変が散在していることから、赤痢アメーバ症の重症度と粘膜病変の分布には関連性があることを明らかにしました。
 また、腸内細菌叢解析を行った結果、無症候性持続感染例では、症候性感染例と比較し、腸内細菌叢の多様性が乏しく、一定のクラスターを形成することを発見し、特に特定の細菌群(Ruminococcaceae, Coriobacteriaceae, Clostridiaceae, Streptococcaceae)が、赤痢アメーバの病態に関与する可能性を示唆する内容となります。海外の臨床現場においては、無症候性持続感染が診断される機会は少なく、かつ下部内視鏡検査が実施される機会が本邦より圧倒的に少ないことから、本邦独自の臨床・研究環境の強みを活かした研究内容であります。

 

 今回の箱根山奨励賞受賞に際し、柳川泰昭先生よりコメントをいただきました。この場にて皆様にご紹介いたします。

 赤痢アメーバ症は、国内で年間1000例前後の報告数ですが、実は性感染症として国内で増加し続けている感染症です。
 病態も多様であり、症状が全くないため人間ドックで偶発的に診断される症例から、重症感染を呈する症例まで病状が幅広く、時には致死的感染症となるため、臨床医として、かつ公衆衛生的観点からも、危惧すべき感染症の一つであります。
 今後も、赤痢アメーバ症の病態解明について、引き続き研究を推進して参ります。

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