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隔離予防策の適用を検討すべき臨床状況

更新日:2018年8月13日

既述のとおり、HIV自体の病院(院内)感染対策は標準予防策で十分であるが、HIV感染者は細胞性免疫不全宿主であり、入院時および入院管理中は合併しうる各種感染症への注意と適切な隔離予防策(接触感染予防策 Contact Precautions・飛沫感染予防策 Droplet Precautions・空気感染予防策 Airborne Precautions)の追加が必要となる場合がある。

1) ニューモシスチス肺炎(PCP)

未治療のHIV感染者が罹患する肺炎として最も頻度が高いものである。原因病原体であるPneumocystis jirovecii が患者周辺の環境に拡散し空気感染しうることが判明している1,2)。よって、HIV感染者はもちろん、他の細胞性免疫不全患者(免疫抑制剤やステロイドを内服している症例)への病院(院内)感染が起こりうる。PCP発症者を入院させる場合には重度免疫不全者とは病棟を別にするか、あるいはPCP治療開始1-2週間程度は個室で管理することが望ましい。

2) 肺結核

肺病変を有する/呼吸器症状を伴うHIV感染者では常に考慮すべき疾患である。細胞性免疫能の低下に伴い臨床症状や画像所見はしばしば非典型的となるため、診断自体が必ずしも容易ではない場合があり、肺結核を疑わずに不用意に大部屋に入院させた場合に、結核の暴露事故につながるリスクがある。CT画像における縦隔リンパ節腫大と造影剤によるリング状増強所見は結核を疑う重要な所見であり、このような所見を見た場合には肺野に陰影を認めない場合でも、喀痰の塗抹検査を実施すべきである。

3) 麻疹

日本では依然多くの麻疹患者が報告されている。麻疹に対する感染防御の主体は細胞性免疫であるため、HIV感染者では発疹が出ないなど非典型的な症状を呈することがあり、診断は必ずしも容易ではない。麻疹の流行状況を考慮し、疑い例あるいは麻疹発症者との接触歴が明らかな例では、発熱時に常に麻疹を念頭に置いた対応(空気感染対策)を行う必要がある。なお進行したHIV感染者の場合には、たとえ麻疹罹患歴があっても再感染が起こりうる。CD4数200/μL未満の場合には既往歴に関わらず感受性者であると考えるべきである。重度免疫不全例が麻疹に罹患した場合には、亜急性脳炎など致死的な合併症を来たしうる。

4) 下痢症を呈する場合

HIV感染者は、性感染症としてアメーバ性腸炎、クリプトスポリジウム、ジアルジア症を発症しうる。HIV感染者の下痢、血便を見た際には、常にこれらの疾患を念頭に置いて診療を行うことが重要である。これらの病原体を含む便検体が不適切に取り扱われた場合には経口感染する可能性があるため、検体の取り扱いには十分に留意する必要がある。

参考文献

  1. Choukri F, et al. Quantification and Spread of Pneumocystis jirovecii in the Surrounding Air of Patients with Pneumocystis Pneumonia. Clin Infect Dis. 2010;51(3):259-65.
  2. Yazaki H, Goto N, Uchida K, Kobayashi T, Gatanaga H. Oka S. Outbreak of Pneumocystis jiroveci pneumonia in renal transplant recipients: P. jiroveci is contagious to the susceptible host. Transplantation 2009;88:380-385.

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