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日和見疾患の治療
「医療従事者向け情報」のページは、医療従事者を対象とした情報提供を目的に作成しており、一般の方が理解できるよう配慮されたものではありません。
治療法の選択、医療用医薬品の使用など、患者さん独自の判断で実施されますと生命に危険を及ぼす場合があります。治療方針については、ご自身の担当医、コーディネーター等に必ずご相談ください。
HIV感染者においては、細胞性免疫不全の進行に伴い、エイズ指標疾患に代表される様々な日和見疾患の発症リスクが上昇する。CD4陽性Tリンパ球数に応じて発症しやすい日和見疾患はある程度定まっている(表1)。
CD4陽性Tリンパ球数(/μL) | 感染症 | 非感染症 |
---|---|---|
> 500 | カンジダ腟炎 | 持続性全身性リンパ節腫脹(PGL) |
200-500 | (上記に加え:他欄も同様) 細菌性肺炎 肺結核 帯状疱疹 口腔カンジダ症 カポジ肉腫 口腔毛状白板症 |
子宮頸癌 悪性リンパ腫 特発性血小板減少症 リンパ性間質性肺炎 |
< 200 | ニューモシスチス肺炎 播種性ヒストプラズマ症 播種性コクシジオイデス症 粟粒/肺外結核 進行性多巣性白質脳症 |
消耗症候群 末梢神経障害 HIV脳症 |
< 100 | トキソプラズマ脳炎 クリプトスポリジウム症(慢性) ミクロスポリジウム症 食道カンジダ症 |
|
< 50 | サイトメガロウイルス感染症 播種性非結核性抗酸菌症 |
CNSリンパ腫 |
Hanson DL, et al. Arch Intern Med 1995;155:1537-42.
高度免疫不全例においては、複数の日和見疾患を同時に発症する可能性があること、疾患名から通常想起される典型的な症状を呈さない場合があること、抗HIV療法開始後に免疫再構築症候群として症状が顕在化する可能性があることに注意する。また、日和見疾患のみに注意を奪われがちになるが、HIV感染症・免疫不全と関係しない疾患の可能性も常に念頭に置いて診療にあたることが重要である。
一部の日和見感染症については、予防投与の対象となる。予防投与には「一次予防(=発症阻止)」「二次予防(=該当疾患の初期治療終了後に行う維持治療)」がある。一次予防・二次予防の開始・中止基準は、米国CDC/NIH/IDSAによる合同ガイドライン(Guidelines for the Prevention and Treatment of Oportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents)に詳しい。
CD4陽性Tリンパ球数が低下し一次予防開始の基準を満たしている場合でも、該当疾患を既に発症していないことを予防投与開始に先立って確認する必要がある。
各日和見疾患の治療の詳細については「HIV感染症とその合併症 診断と治療ハンドブック(外部サイトにリンクします)」を参照されたい。
参考:HHV-8関連疾患(カポジ肉腫・キャッスルマン病・原発性滲出性リンパ腫)
厚生労働科学研究 エイズ対策研究事業「エイズ患者におけるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスが原因となる疾患の発症機構の解明と予防および治療法に関する研究」班(研究代表者:片野晴隆)