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抗HIV療法(治療ガイドラインのご紹介)

更新日:2016年9月20日

抗HIV療法の進歩に伴い、HIV感染者の生命予後は劇的に改善した。最新の知見によれば、早期に診断され適切に管理されているHIV感染者の生命予後は、HIV感染症以外の疾患(ウイルス性肝炎など)の合併がない場合には、非HIV感染者と大きく変わらないと考えられている。

未治療のHIV感染者においては、非エイズ合併症(動脈硬化性疾患・腎疾患・悪性腫瘍などエイズ指標疾患に含まれない疾患)の頻度が増加する。これはHIV血症に伴う炎症状態の持続や血管内皮障害によるものと考えられており、抗HIV療法の目的は「障害された細胞性免疫能の回復・維持」から「HIV増殖を抑制することによる非エイズ合併症の予防」に変化しつつある。2015年に報告されたSTART試験の最終報告では、CD4陽性Tリンパ球数500/μL以上であっても抗HIV療法が様々な合併症のリスクを低下させることが明確に示された。さらに、有効な抗HIV療法が性的パートナーへのHIV感染リスクを低下させることも前向き試験で実証された(HPTN052試験・PARTNER試験)。

無症候性HIV感染者における初回治療開始のタイミングに関するガイドライン推奨は、早期治療開始の有用性を支持する知見の集積を受けて年々早期化している。2012年3月27日付以降の米国保健福祉省(DHHS)ガイドラインでは、CD4陽性Tリンパ球数に関わらずすべてのHIV感染者に対する抗HIV療法開始が推奨されている。さらに、いわゆる先進工業国より医療資源に乏しい地域も考慮したWHOガイドラインにおいても、2013年6月の改訂でCD4数500/μL未満の全例で治療を開始することが推奨され、さらに2015年9月の改訂において(DHHSガイドライン同様)CD4陽性Tリンパ球数に関わらずすべてのHIV感染者に対する抗HIV療法開始が推奨された。

初回治療

初回抗HIV療法の開始時期ならびに薬剤選択に関しては、各国の事情を反映して様々なガイドラインが存在する。日本においては、公的なものとして厚生労働省研究班による治療ガイドライン(外部サイトにリンクします)米国保健福祉省(DHHS)ガイドライン(外部サイトにリンクします)が、エキスパートオピニオンとしてHIV感染症治療研究会による「HIV感染症治療の手引き(外部サイトにリンクします)」が、しばしば参考とされている。知見の集積に伴いガイドラインは随時更新されているため、治療方針決定にあたっては最新のガイドラインを参照する必要がある。

(その他の国のガイドラインについては、リンク集のページよりご確認ください)

治療薬変更

初回治療開始から良好な服薬アドヒアランスを維持できており、ウイルス学的失敗の既往がない例においては、より簡便な、あるいはより副作用が少ない抗HIV薬への変更は通常問題なく可能である。

過去に治療失敗歴がある症例、服薬アドヒアランスが十分でなかったことが推測される時期のある症例の治療薬変更に関しては、より慎重に行う必要がある。変更に伴う治療失敗やさらなる薬剤耐性の蓄積を回避するため、専門家の助言を求めることが望ましい。良好なHIV抑制効果を得るためには、十分に効果を維持している抗HIV薬を少なくとも2剤以上併用する必要がある。